天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石楠花

安国論寺の石楠花

     蜘蛛とぶや富士のふもとの冬支度
     凍らざる富士の湧水水かけ菜
     「荒獅子」の名札かかれる椿かな
     若葉萌ゆ楠の根方の手玉石



  登山者が幸せ祈りつるしけり鈴鳴りひびく富士の山頂
  つゆしげき裾野の原に生きつげるミヤマシジミのむらさきの羽
  湖に影を落として聳え立つ富士の夜空のオリオン星座
  この国の真中に立ちて比類なし富士の裾野の菜の花畑
  積雪の山ふところに凍らざる不二の湧き水白糸の滝
  湖にまくろき影を沈めたる富士の稜線満月のぼる
  太陽の傾くほどにあらわるる富士の彩雲空のたまゆら
  冬きたり雪巻き上ぐる季節風富士の樹海に哭くもののあり
  ささがにの尻より噴ける白糸の風に引かれて飛べるささがに
  秋ふかみ雲湧き奔る富士の根の落葉に積める雪の結晶
  尼寺の庭に根付きて雨に濡る尼の手植えの椿「荒獅子」
  法華経の首題にそひて筆染めし安国論寺赤き石楠花