天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

俳人協会賞

 「俳句研究」五月号に、第四十五回俳人協会賞受賞者の記念作品が載っている。正賞は大串章、鍵和田秞子の二名、新人賞は高田正子、鴇田智哉、中村与謝男の三名に与えられた。ここでは、鍵和田秞子と鴇田智哉の作品をいくつか取り上げてみたい。

*鍵和田秞子作品で、良いなと感じたものとして、
     残雪にほそき枝刺さり不破の関
     石一つ一つの遅日関の跡
     二手より野焼きのけむり関ヶ原
 疑問が残るものとして、
     滝つ瀬は日よりかがやき鳥の恋
     (「より」が気になるし、鳥の恋は動くであろう。)
     へその緒はいづこ梅林模糊と暮れ
     (誰のへその緒なのか不明。老いた作者自身のものか成
      人した子供のものか。)
     真白な伊吹嶺のぞく雛遊び
     (伊吹嶺が、雛遊びをしている部屋から見える、という
      ことなのだが。あまりに擬人化が前面に出すぎて嫌味
      になる。)

*鴇田智哉作品は、詩だから許されるとしても直感的に理解できない
 ものが多く、興味を持てない。
     いきものは凧からのびてくる糸か
     (何で糸がいきものなのか?)
     おくゆきが春の頭のなかにある
     (判らなくはないが、「おくゆき」の実感が伝わらない。)
     菫とはとほくに人のこゑのする
     (「菫とは」で切れるのであろうが、遠くの人が発した言葉
      が「菫とは」であったのか?)


     若葉萌ゆ地酒も売れる陶器市
     鯉跳ねて水面破るる花筏
     春昼の法螺貝鳩を翔たしむる
     お御籤を櫻にむすぶ同期会