挨拶句
「古志」六月号の長谷川主宰の句から。
雪国の花もよきころ山葵漬
*雪国、花と書かれると、雪と桜花とが同時にイメージされる。なんとも静かで豪華。だが、作者はその現場にはいない。どこにいるのか? 家にいてあの雪国で作られた山葵漬を食べているのだ。あそこは今さくらの見頃だなあと。挨拶句である。
短夜の波は硯となりにけり
*詞書に「住吉の硯あつらへて」とあり、これも挨拶句である。住吉は住吉神社の所在地。日本書紀の頃から知られた海上守護と海運の神を祀る。古典では有名な俳枕、歌枕である。ただ、住吉と硯の関係は寡聞にして知らない。それはともかく、住吉といえば、現代では住之江競艇で有名。そこに波音を聞いて一泊した翌日、硯を買って帰ったのだろう。
今日は朝から眠たくてしようがない。二宮町の吾妻山に登って四阿(あづまや)のベンチで寝そべっていた。主婦たちの声が煩くなったのを機に下りた。
ムクドリがだみ声あぐるさくらんぼ
あぢさゐの青咲きはじむ東海道
新緑の風に紫蘭の咲きにけり止血・排膿・消炎 に効く
わが眠る四阿(あづまや)の木に小鳥きてしばしさへずり
飛び去りにけり
大山も富士もかくれて朦朧たり相模の小野に湧きたてる靄