天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

特殊空挺隊

 会社の昼休み、例によって靖国神社にいって驚いた。観光バスが参道を埋め尽くしている。これほど多くの人がどこに入ったか、何事があるのかさっぱり分らなかった。
今日から新しい月に入ったので、神社拝殿の社頭掲示が替わった。パンフレットには明治天皇の御製も載っているが、今月は「教育」の御題で、明治三十九年作。
     いかならむ 時にあふとも 人はみな
     まことの道を ふめとをしへよ

掲示の遺書には「出発間際」と表題がつけてある。新潟県出身、第三独立飛行隊に所属。昭和二十年六月に沖縄で戦死。死後の昇級であろうか、二十二歳の生涯を陸軍少佐として閉じた。

  熊本を発つとき書きし遺言を人ら読みゐる靖国の庭
  もののふを志したる身の栄と大命拝す陸軍少佐
  「出発間際時間なく失禮仕候」としたためてあり遺言末尾
  家の名を恥めざること誓ひたる二十二歳が沖縄に死す
  欣然と死地に赴く末つ子の候文のかなしかりけり
  沖縄北飛行場附近に死せりとふ義烈空挺隊の青年
  あまりにも型どうりなる文面に涙しぬらむ彼の父と母
  死の後の階級特進よろこぶや黄泉にさまよふ軍神のむれ


明治天皇の御製に反歌を二首捧げておこう。

  人はみなまことの道をふめといふ 見失ひたるまことの道を
  何をもてまことの道とまをすべき むかしもいまも人殺しあふ