天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大根のうた(続)

 昨日引用した仁徳天皇作と伝える歌について注釈しておく。講談社文庫『古事記歌謡』全訳注・大久保正による。歌の現れる順番が、古事記日本書紀とでは反対になっている。昨日のものは日本書紀の順番で、以下は古事記に現れる順番。

     つぎねふ 山代女の
     木鍬持ち 打ちし大根
     根白の 白腕
     枕かずけばこそ 知らずとも言はめ

          (訳)
     山また山の 山城の女が 
     木の鍬で 耕し作った大根。
     その根が白いように 白いそなたの腕を
     枕にしなかったのなら 知らないと言うのもよかろうが。



     つぎねふ 山代女の
     木鍬持ち 打ちし大根
     さわさわに 汝が言へせこそ
     打ち渡す 八桑枝なす 来入り参来れ

          (訳)
     山また山の 山城の女が 
     木の鍬で 耕し作った大根。
     さわがしく そなたが言われたからこそ
     一面に見渡される 茂った桑の枝みたいに おおぜい
     引き連れてやってきたのですぞ。


 話題を変える。大根の首を切ることと打ち首とを結びつけた短歌がある。あまりよい趣味ではないが。はずみにて、が自然な感じなのでまあよいか。


  大根の首切り落とすはずみにて首斬り浅右衛門のことを思いぬ
                      石田比呂志