天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新素材を詠む

 角川『俳句』二月号の特集「新素材を詠んで新境地を拓く」にはいくつか面白い評論がある。「好奇心と方法論」という総論は、藤原龍一郎が担当していて、連歌俳諧の時代から新しい境地を求めてきたことを強調し、これからも新素材をどんどん詠んで新境地を拓くべし、と鼓舞している。ただ、彼が引用している新素材の作品は、高く評価されたものだけではない。評価についてあまり触れられていないので、後日考察を加えてみたい。
     
      ピストルがプールの硬き面にひびき    山口誓子 
      逆襲ノ女兵士ヲ狙ヒ撃テ!        西東三鬼
      梅雨の人パチンコ盤の裏に居る      富安風安
      冷房のテレビにぱつと昭和基地      阿波野青畝


山口誓子の例は評価の高いもの。富安風安や阿波野青畝らの作品は、いただけない。

分野毎に新素材について論じているところが参考になる。例えば、「俳句とスポーツ」「科学と寓話」「書物の手触り」「音楽を詠む」「やきものの世界」 などである。佳作と思う作をいくつか以下に挙げておく。


      春ひとり槍投げて槍に歩み寄る      能村登四郎
      水の地球少しはなれて春の月       正木ゆう子
      灯の早き神田古書店時雨けり       水原春郎
      ピチカート静かに消える冬銀河      浦川聡子
      絶やしてはならぬ窯火や火取虫      木暮陶句郎