天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

新素材を詠む(続)

 角川『短歌』2月号にも、『俳句』と同様、新素材を歌に詠み込む小特集が組まれている。題して「新しい対象・言葉を安易に使う怖さ」。論者は宮本永子、日置俊次のふたりで、秀歌三十首選を黒岩剛仁が担当している。日置俊次は、小島ゆかりの詠法に焦点をしぼり、新素材を歌に詠み込む場合のコツのようなものを提示しようとしていて面白い。彼の論にないわが感想を思いつくままに書いておこう。


  ファミコンソフトにマリオ眠らせチカチカとマリオの屋根に
  雪降り積む
  *三好達治「測量船」の中の有名な詩を踏まえているのだが、
   その部分「・・眠らせ・・・屋根に雪降り積む」の引用が
   長いため安易な作りに感じられて成功していない。
  

  小春日の椅子にまどろむ自己中心(ジコチュウ)の娘ピンクの
  ぽんぽんになる
  *「自己中心」にルビがふられているので抵抗感はないし、
   下句の見立てが中心になっているので成功している。


  熊蜂のセレブな毛皮すてきだわ まだうらわかき菜の花言へり
  *メルヘンの世界にもってきているので、「セレブ」がうまく
   溶け込んでいて気にならない。


  ひそかにもわれは愛しむ気管支の薬を呑みしディープ・インパクト
  *これは、一時期一過性の歌。何故、気管支の薬を呑むことが
   問題なのか、競馬に関心のない人や時間が経てばわけがわから
   なくなる。それは重々承知して作っているのだが。


  コンビニの角を曲がれば渦まきて雪は吹き来る道の奥より
  *「コンビニ」は世の中に十分定着しているし、時代が
   経っても人々の記憶なり思い出には残るので、違和感なし。
   また、この一語以外は、時代に関りない言葉が使われている。