天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ねばりある表現

 わが作品は、論理的に明白で表現が淡白、という点を常々反省している。数学が好きで仕事はITが専門だからその習性が反映している、といっては元も子もなくなるか。よって人の作品を読むときには、どうしてもねばりのある表現に関心がいく。「俳壇」二月号に、リレー競詠として、倉田紘文の33句が載っている。この中からねばりある表現の例をあげてみよう。

 
      角を曲がりて臘梅の路地となる
      意のままに水輪を増やしかいつぶり
      熱燗のおとぎの国に迷ひ込む
      水輪ひろげて真ン中に落椿
      夫唱婦随婦唱夫随の夫婦鴨
      楼門の高き寺格の時雨虹
      一湾をゆりかごにして百合鴎


 特徴は、明確な切れが入っていない、音韻の繰返し・くどい、副詞と動詞の組合せ、「の」による接続、複数の動詞 など。これらはすべて秀作かと言えば、そうではない。技巧が目立つ、解釈が割れる など大半が危うい。