言葉のゆくえ
「歌壇」六月号の特集「短歌・言葉のゆくえ」は、なかなか面白い。そこで引用されている歌をいくつかあげるだけで、何が話題になっているかが、容易に想像できる。
雨後の夜大気は水の粒はらむ 君に傷つけられてあげよう
川本千栄
何でまあ開発の山の奥になど子を生んで大鷹は苦しむらんか
馬場あき子
ああヤバ、すんごくせつない夢のサアあとで「雄々しさは、
攻撃にある」 岡井 隆
口語、現代話言葉をどう短歌に取り入れているか、口語と文語の混在、その効果はどうか? 効果は、良いことばかりでない。短歌を衰弱せしめる負の効果もある。
流行の言葉にとらわれて、歌にのせる心をおろそかにしては、本末転倒である。それを思わせるのが、作品連載の前登志夫の揺るぎない文語短歌である。現代流行の言葉とは無縁である。10首のうち、どれを取り上げてもよいが、例えば次のような歌。
日もすがら眠りたりけり乞食もきたらぬ家に山吹溢れ
風そよぐ幾夜かありて狼のむれ下りくらし霧にまぎれて
立合の殺気あるべしおのづからせせらぎに血の流るる静寂
ちなみに、現代口語短歌の口火をきった俵万智の最新作が、「短歌研究」六月号にのっている。多くは混合文体だが、どこか無理している、というか作意が匂う。
クレヨンの一本一本一本に名前書くとき四月と思う
キサマとかテメェとかが好きアナタとかオマエサマとかキミ
とかよりも