天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

青葉潮

5月の潮

 晴天の五月の海辺は心地よい。平日なら人が少ないので更に快適だ。働くことを忘れて日がな一日、釣りができればもはや言うことはない。
 角川書店の『俳句歳時記』によると、初夏の青葉のころに日本列島に近づいてくる黒潮を青葉潮あるいは青潮などと呼ぶ。季題「夏の潮」の傍題だが、魅力ある言葉である。


      ふかぶかと海は呼吸す青葉潮
      青葉潮揉まれて白き礁(いくり)かな
      
  潜きける川鵜はいづこ満ち潮ののぼる川面の上流に出づ
  キラキラと朝の光をこぼしたり小魚釣らる突堤の先
  平日の朝の磯辺に立ちて釣る悲しからずやラジオの演歌
  ハマナスの花のまなかに生まれたる実はふくらみて
  下向きに垂る


  潮風に揺れ蜜蜂に身をまかす白きあり紅きあり
  ハマナスの花


  林立のマストに垂るる艫綱を吹き鳴らすなり五月潮風
  並べたる竿一本をあげたれば小さき河豚が釣糸に垂る
  仰々しく釣具ひろぐる突堤に五月の風の釣果少なし
  ふかぶかと潮引き込み吐き出だす海の呼吸を岩礁に見る
  岩壁の洞に棲まへる何鳥か五月の風にひと日さへずる
  四、五枚の小さき平目釣りあげて半日すごす島の突堤