天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

毛虫

二宮町吾妻山にて

 みんなに毛嫌いされるが、蝶や蛾の幼虫で、体に多くの毛のあるものの総称。毛は感覚器官でもあり、その配列は種類により決まっているらしい。俳句では夏の季語。傍題に、「毛虫焼く」あり。


      自が糸に縋りて桜毛虫かな
                石塚友二
      青丹よし奈良の毛虫におののくよ
                平畑静塔


  水無月のゆふべの庭の土暑し掃きあつめたる毛虫を焼くも
                       川田 順


 林の中で糸に垂れて揺れている毛虫を写真に撮らんと、やたらめったらシャッターを切ったが、ついに焦点合わず右のような画面しか残らなかった。


      山頂に子らの声ありつばくらめ


  蝶になる毛虫と思へばいとほしも糸にすがりて風にふかるる
  焦点の合はざるままに撮りたれば毛虫は呆と若葉にまぎる
  行末はいかなる蝶に変はるらむ糸に下れる毛虫くねくね
  石仏の首とる習ひヤクザにもありしと聞けば明治思ほゆ
  丹沢も富士も見えざり天頂に陽は照りながらつゆけき霞
  イヌシデのひこばえなるかあかあかと切株に萌ゆ幹倒されし横
  木洩れ陽の葉影の揺るる草叢はどくだみの花つゆくさの花
  見下せば駅のホームに人立てり車輪きしみて電車が止まる
  二股に分かれし幹は断たれたり桜の赤き切口ふたつ