天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ある朝に

吾妻山にて

 ある梅雨晴れの朝、吾妻山の頂に登った。驚いたことにもうコスモスがちらほら咲いていた。白い蝶がとんでいた。芝生に坐って歌を詠んだ。



  休日は老人たちがダンスせる体育館のうす暗き朝
  体育館横に群れたる松葉菊咲き疲れたるさまにかがよふ
  梅雨晴れの朝にひびける歌声は女らの声校舎の二階
  見下せる町の空き地にかしましく家建ちはじむ梅雨晴れの朝
  大いなる木五倍子の枝にコツコツと音たててをり朝のコゲラ
  どくだみの十字の花の草むらにまむし注意の立札はあり
  キキョウ科のほたるぶくろは咲きにけり浅間神社の祠のめぐり
  キツツキの木を打つ音のひびきけり遊具静まる朝の林に
  大山も富士も隠せる梅雨空をともに仰ぎぬ若き榎は
  コスモスははや咲きにけり水無月の紋白蝶のとぶ吾妻山
  梅雨晴れの山にコスモス咲きにけりはや秋風のゆきあひの空
  ゆくゆくはシンボルになる 山頂の若き榎をロープに囲む
  ぬばたまの黒羽根ひとつ落ちてをり芝生青める山頂の朝
  繊細にして美しき金色の美容柳の雄蕊立ちたり
  いにしへもかくてありけむ野薊の葉むれにのぞくつゆくさの花
  人みなが働く朝をわがひとり歌を詠みゐる山の頂