天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

金魚

日向薬師境内にて

 コイ科。中国が原産地で鮒を原種とする。日本には室町時代に輸入され、江戸時代から観賞用に多くの品種ができた。和金、琉金、出目金、珠文金、蘭鋳など。養殖地としては、大和郡山、愛知県弥富町、東京江戸川などが有名。特に大和郡山では、金魚池の中を電車が通っているような感覚にとらわれた記憶がある。


      金魚大鱗夕焼の空の如きあり     松本たかし
      金魚手向けん肉屋の鉤に彼奴を吊り  中村草田男


  金魚屋の水槽の水撒かれたりにおいとなりて立ちのぼる金魚
                     和田周三
  薄氷の赤かりければそこにをる金魚を見たり胸びれふるふ
                     森岡貞香
  雨しぶく庭に佇ちゐていつまでも病める金魚を子はまも瞻りをり
                     岡野弘彦
  おそろしきもののはじめと誰か言ひ月光の桶にゆらぐ蘭鋳
                     苑 翠子
  わが内の脆き部分を揺り出でて鰭ながく泳ぐあかき金魚は
                     中城ふみ子