短歌と詞書とのコラボ(2)
岡井の一連では、次に
月ぞしるべ此方へいらせ旅の宿 (芭蕉)
安全で落ち着いてゐる朝だけだ まつ直ぐな線が
部屋に来てゐる
となっている。 発句は、寛文4年作で芭蕉21歳。
「佐夜中山集」にある。
( 松江重頼編「佐夜中山集」に「松尾宗房」の名で次の発句2句が
初入集。
姥桜咲くや老後の思い出
月ぞしるべこなたへ入らせ旅の宿 )
岡井の歌の下句が示す時刻は何時であろう? まつ直ぐな線とは月の光ではないのか?また上句の次にはどのような文が省かれているのか? 答は芭蕉の句から想像するしかない。芭蕉の句は、月を道しるべとしてこちらの宿へいらっしゃい、と旅人に呼びかけている。対して岡井の歌は、宿が安全なのは朝だけであり、現にこの夜は、部屋に銃の照準光が入ってきている、と言う。これも紛争地域の情景であろう。