天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

赤とんぼ

酒匂川の岸辺にて

 中型のトンボで初夏に発生、晩夏から秋にかけて老成し、真紅に変身する。わが国にはアキアカネなど約20種が生息する。ずいぶん種類が多い。
 「ゆうやけこやけの あかとんぼ おわれてみたのは いつの日か」 で知られる童謡の「赤蜻蛉」は、作詩・三木露風、作曲・山田耕作だが、その時期は、詩が大正10年、曲が昭和2年。この歌が有名になったのは、昭和30年にでた音楽映画「ここに泉あり」の中で、山奥の少年がこの歌を唄ってからであるという。戦前から流行っていたのだろうと思っていたので、驚きである。


  赤とんぼ吾のかうべに止まりきと東京にゆかば思ひいづらむ
                        斎藤茂吉
  ささやかにいのち飛翔の赤とんぼ風にさからふ時にきらめく
                        佐藤美知子
  赤あきつもいのち弱れば石菖(せきしやう)の葉に距離たもちて
  飛べりしばらく               香川 進

  夕焼けの赤に吸はれて透明の羽根より溶けてゆけ赤とんぼ
                        浜田康敬
  朝光に翅ふるはする赤とんぼ生れたるものはすでに影もつ
                        田口玲子
  なんとなくかたはらにくるあかとんぼわれはさびしき顔してゐるか
                        稲川信恵

     洪水の後に増えたり赤とんぼ