葱
中国西部が原産地らしい。ユリ科の野菜。関東では地中の軟白部を食べる根深葱、関西では柔らかい緑葉を食べる葉葱が多い。一文字(ひともじ)ともいう。寒さに強い。鍋物、あえ物、薬味 として用いられる。風邪予防の薬効があるといい、動物園で猿たちにも与えているという。
春さめのふた日ふりしき背戸畑のねぎの青鉾並み立ちにけり
伊藤左千夫
茫として歩み来しとき昏方の有刺鉄線のなか葱勁く立つ
田谷 鋭
しづくする葱の畑を横切るとき雨を吸ひたる敷藁匂ふ
河野裕子
葱あまた作られ鋭く匂ひをり矢切の渡しへ続く野の道
神作光一
一本の葱を虔(つつし)みてわれは見つ白と緑のいろの深しも
川端 弘
脱衣せる少女のごとき白き葱水に沈めて我はさびしゑ
中城ふみ子
葱畑に葱のとがりのあをあをし霜をよぶ大地の微動を知るか
小池 光