天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

福浦漁港

真鶴町福浦漁港にて

 真鶴岬には何度も行ったが、それは真鶴港側を通るルートであった。今回は、真鶴半島の付け根にして真鶴港の反対側にある福浦漁港を初めて訪れた。たまたま、洋画家・中川一政の生涯をテレビで見て触発されたのである。東京に生れて97歳の長寿を全うした中川一政は、後半生の40年を、福浦港を見下ろす高台に居を構え、旺盛な創作活動を続けた。
 坂を下って、子之神社、曹洞宗春花山・醍醐院、漁港、浄土真宗本願寺派海上山・了善寺と見て回った。


     朝漁(あさど)りの魚売る声や紫木蓮
     石の面に佛あらはる春日向
     石段はゆきどまりなり韮の花


  奥処より神主きたり挨拶す子之神社なる朝の境内
  春花山・醍醐院をば覆ふべう白木蓮は咲きほこりたり
  この辺にイーゼル据えて描きにけむ弓手初島、馬手・日金山
  同じ場所にイーゼル据ゑて二十年飽かず描きにし中川一政
  なまかひに初島大島かすみたり弓手に伸ぶる真鶴岬
  突堤の内の水面を見つめたり釣糸垂るる父と息子は
  一政がつひの棲み家を定めにし春のうららの真鶴町
  ふり返る箱根の山に一政が好みて描きし駒ケ岳見ゆ
  近道をせむとたどりし杣道は家一軒に行きどまりたり