天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

あぶら蝉

神奈川県二宮町吾妻山にて

 半翅目セミ科の昆虫の1種。名称の元は、その鳴き声が油を炒るような音に似ているところにある。幼虫は地中で6年間過ごし、7年目に地上に出て来る。


  あぶら蝉しきなく庭の青芝に散りこぼれたる白萩のはな
                       長塚 節
  油蝉いま鳴きにけり大かぜのなごりの著るき百日紅の花
                       斎藤茂吉
  油蝉しきりなるなかに一つ二つつくつくほふし声のすみたる
                       土屋文明
  油蝉捕(と)られし声をききとめぬ書(ふみ)に疲れし
  身をやすめつつ              松田常憲


  アパートの壁灼く陽差し壁に来てこゑ尽くしたる油蝉ひとつ
                       林 安一
  ぬけがらもなきがらもある森のなか時間(とき)止まらせて
  あぶらぜみ啼く              木畑紀子