天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

シオカラトンボ

藤沢市遊行寺境内にて

 腹の上側が灰紺障u色なところから塩辛という名がついたのだろう。ただこれは成熟した雄の印。雌と未熟な雄は、鮮黄色に黒い斑紋が散っているので麦藁蜻蛉と呼ばれる。日本全土のほか、極東ロシア、中国、韓国、台湾などに分布する。


  税務署の横を流るるこの川に塩辛とんぼ今年は多し
                    安田純生
  庭隅に夕あかりゐる水あれば塩辛蜻蛉(しほから)の
  きて青き尾洗へり          仲 宗角


  ポストまで道づれとなるわたくしのまへ、うしろ飛ぶ
  シオカラトンボ           米田靖子



シオカラトンボは、赤とんぼや糸とんぼに劣らず日本ではよく見かけるのだが、俳句や短歌に詠まれる頻度は前者に比べてずっと少ない。容姿の違いが詩情を左右するのである。


  石燈に塩辛蜻蛉動かざり小栗判官目洗之池
  産卵の済むまでメスを警護するオスの律義さシオカラトンボ