天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蜻蛉

シオカラトンボ(鎌倉・長谷寺にて)

 トンボ。古事記万葉集では、「あきづ」「あきつ」と言った。トンボ目に属する昆虫の総称。赤とんぼ、秋あかね、糸とんぼ、鬼やんま、銀やんま、塩辛とんぼ、精霊とんぼ、燈心とんぼ、猩々とんぼ 等がいる。



  あきづ羽の袖振る妹を玉くしげ奥に思ふを
  見たまへわが君       万葉集湯原王
                     
  ひぐらしも鳴かぬ夕べとなりにけり青き空には
  あきつ流るる           土屋文明
                        
  べに色のあきつが山から降りて来て甲府盆地
  うめつくしたり          山崎方代         
                       
  殺してもしづかに堪ふる石たちの中へ中へと
  赤あきつ蜻蛉 ゆけ        水原紫苑        
                       
  ふるさとの幼なじみを思ひ出し泣くもよかろと
  来る来るとんぼ          与謝野晶子
                       
  太葱の一茎ごとに蜻蛉ゐてなにか恐るるあかき夕暮
                   北原白秋
  まかがよふひかりたむろに蜻蛉らがほしいままなる
  飛のさやけさ           斉藤茂吉
                       
  税務署の横を流るるこの川に塩辛とんぼ今年は多し
                   安田純生
  物部川山のはざまの風さむみ精霊蜻蛉飛びて日暮るる
                   吉井 勇