天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鬼灯

横浜市舞岡公園にて

 ホオズキは、ナス科ホオズキ属の多年草そしてその果実。カガチ(古名)、ヌカヅキとも言う。原産地は東南アジアというが、南欧アメリカ大陸などにも自生している。花言葉は「偽り」。古事記では「赤酸漿(あかかがち)」と呼ばれ、赤い実が八岐大蛇の目に譬えられた。鬼灯の文字を当てるのは、実を包む袋の様子を赤い不気味な提灯に見立てたからであろうか。


     暗殺の辻の鬼灯与力町     森 武司


  うなゐらが植ゑしほほづきもとつ実は赤らみにたり
  秋のしるしに            伊藤左千夫


  蝕(むし)ばみてほほづき赤き草むらに朝は嗽ひの水
  すてにけり              長塚 節


  この夕べ心いらだたしふり向きてほほづき鳴らす妻
  を叱れり              結城哀草果


  うしろ向きにおかっぱ髪をたらしいて星くだる夜に
  ほおずき鳴らす            川口常孝


  紅提灯子等さげ通る背戸道の鬼灯草も夕暮れにけり
                     村野次郎


[追伸]古事記須佐之男命の大蛇退治」で、老夫の足名椎が大蛇
   の形を須佐之男命に説明する個所は、次のように書かれている。
   「その目は赤かがちの如くして、身一つに八頭八尾あり。
    またその身に蘿と檜榲と生ひ、その長は谿八谷峡八尾に
    度りて、その腹を見れば、悉に常に血爛れつ。」