柚子(ゆず)
ミカン科の常緑樹で柑橘類の一つ。ホンユズは比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。小形で早熟性のハナユズとは別種だが、日本では両方をユズと言い、混同している場合が多い。タネの多いものが多い。耐寒性が強く極東でも自生出来る数少ない種である。消費・生産ともに日本が最大。原産地は中国であるらしい。日本では、飛鳥・奈良時代に栽培していたという記録がある。古事記などには、非時(ときじく)の香菓(かぐのみ)として出て来る。なお万葉集では、柑橘類は橘に代表されて数多くの歌が詠まれている。
この雪の消(け)残(のこ)る時にいざ行かな山橘の実の
照るも見む 万葉集・粟田女王
吸物にいささか泛(う)けし柚子の皮の黄に染(そ)みたるも
久しかりけり 長塚 節
わが書斎立つと坐るとまかがよふ柚子の玉実のみえて明るき
太田水穂
ふり仰ぐ頭上の柚子に冬日さし仏のごとく光り輝く
中野菊夫
柚子の実の皮をしむきて歯にかみぬさみしき心やらはむがため
石黒清介
生きの身のうすら寒くてふりむけば無量光体風の日の柚子
雨宮雅子
あたたかき人の聲などきこえぬに柚は抱けり緑の珠玉(たま)を
畑 和子