天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

木蔦

南足柄丸太の森にて

 ブドウ科の蔓性植物。巻きひげの吸盤で樹木や石垣に巻き付く。夏に黄緑の小花を付ける。秋に美しく紅葉するので盆栽にもされる。古名は「あまづら」。ただ、和歌に詠まれた例がみつからない。枕草子には出ているのだが。


  秋風の嵯峨野をあゆむ一人なり野宮のあとの濃き蔦紅葉
                    佐佐木信綱
  空濠の高石垣にはふ蔦の葉は落ちつくして蔓ばかり這ふ
                     川田 順
  大杉の梢(うれ)にまつはる蔦かづら空の明りはここに
  青みて                田谷 鋭


  だれか巨木に彫りし全裸の青年を巻きしめて蔦の蔓は
  伸びたり               春日井建


  壁面をおほへる蔦にひつそりとあたま擡(もた)ぐる先端
  みゆる                小池 光