天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さる寺の境内にて

 マツ科マツ属の常緑高木の総称。古くから神のよりしろとして尊ばれた。「住吉(住の江)の松」「高砂の松」などは長寿や慶賀の象徴であった。和歌では、しばしば「待つ」に重ねた掛詞になる。


  標(しめ)結ひてわが定めてし住吉(すみのえ)の浜の
  小松は後もわが松         万葉集・余明軍


  すみの江の松をあきかぜ吹くからに声うちそふる沖つ
  しらなみ           古今集凡河内躬恒


  立ち別れいなばの山の嶺に生ふるまつとしきかば今
  かへりこむ           古今集在原行平


  影薄み松の絶間を洩り来つつ心細しや三日月の空
                    山家集西行
  おしなべて木のめもはるの浅みどり松にぞ千世の色は
  こもれる           新古今集・藤原良経


  墨染の夕の山をながむれば松のたてるも寂しかりけり
                      香川景樹