天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月(2)

宇宙ステーションから見た月

 現代短歌にも月は数多く詠まれている。月面着陸関係の作品をあげておこう。


  月にゆく船の来らば君等乗れ我は地上に年をかぞへむ
                     土屋文明
  月面に人が降り立つ大き代に短き日本の歌をいとしむ
                     宮 柊二
  月面に醜き象(かたち)さらしゐむホモ・サピエンス
  つけし足跡(あしあと)        杜沢光一郎


  月の砂踏む感触を伝へつつ「静かの海」に立つひとの声
                     木下孝一
  緊張のきはみの声の悲しげにアポロ飛行士いま月を発つ
                   菊地原芙二子

(注)右上の画像は、National Geographic
    (http://www.nationalgeographic.co.jp/science/photos/)
   「宇宙から見た月」から引用した。


 月面着陸に関係する歌として、9月2日の短歌人・横浜歌会で興味ある作品が出たので紹介しよう。「石」という題詠。


  一度でいい創世記の石(ジェネシス・ロック)の実物を
  この手に載せてよく見てみたい     野村裕心


 創世記といえばまず旧約聖書を思う。神が天地を創造する過程の七日間のことが書かれている。そのことと関係するのだろうか? 歌会出席者が、スマホで調べると、創世記の石(Genesis Roc)とは、アポロ15号が月から持ち帰った灰長石の地殻標本とのこと。化学分析により、この石は太陽系の初期、数十億年前に形成されたことがわかった。まさに創世記の石と呼ぶにふさわしい。命名者のセンスに拍手。回収された場所は月のクレーターで、同種の石が転がっていたという。