天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ダリア

大船フラワーセンターにて

 原産地はメキシコの熱帯高地という。18世紀末頃野生種がヨーロッパに紹介され、そこで改良され今日見るような多数の園芸品種ができた。日本には江戸時代にオランダ船によりもたらされ「天竺牡丹」と呼ばれた。夏の季語。


     敗戦の瓦礫ダリアが咲いてゐた   川崎展宏
     ダリア活け婚家の家風侵しゆく   鍵和田釉子
     一滴の雨もとどめず緋のダリア   中村菊一郎
     義仲の墓へダリアを剪りてくる   梶山千鶴子


  ダリアはかぐろく咲けり脳やめる人ら集(よ)りゐてダリアの
  世話をす                 遠山光


  ダリアの蟻灰皿にたどりつくまでをうつくしき嘘まとめつついき
                       寺山修司
  指の刺抜きあぐねゐる裏庭に金のあぶらのやうなるダリア
                      井関古都路
  指紋がなまなまと皆生きをらんこの夜ダリアがうつくし過ぎる
                      真鍋美恵子