天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

太鼓

鎌倉・円覚寺にて

 日本の太鼓には、締太鼓と鋲打太鼓の二種類がある。後者はビヤ樽形の木製の胴の両側に皮をあて、その縁を胴の端に鋲で固定したもの。雅楽用の楽太鼓は、胴の短い鋲打太鼓を台枠に吊るしたもの。特殊な太鼓として、団扇太鼓やでんでん太鼓などがある。


  茂吉翁の地下足袋はけるさながらに人立てる見ゆ太鼓店の前
                     鹿児島寿蔵
  律唱の太鼓うしろにひびくとき聞えざる世界の訴に充つ
                     遠山光
  遠き日のなにかき立てて鳴る太鼓山の社にとりとめもなし
                     武川忠一
  衣裂くと言へるはかくぞ太鼓打つあひまに叫ぶをみなごのこゑ
                     岩田 正
  太鼓うちつついつしかにうたれいる太鼓ぞわれはこの日も夜も
                     田井安曇
  怨念を遣(や)る太鼓とぞ燃ゆる火の炎の中に打ちてはげしき
                     岡部文夫
  太鼓の緒きりりきりりと締むる音痛みと思ふひと刻のあり
                     槙 弥生子
  鬼面つけし者らの太鼓響きつつ生身の耳の優しさは見ゆ
                     黒住嘉輝