天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

小田原城にて

 濠とも書く。敵の侵入を防ぐために城の周囲を掘って水を溜めたもの。水を満たさない空堀もある。周囲に堀をめぐらせた集落を環濠集落という。水稲農耕とともに大陸からもたらされた。佐賀県吉野ヶ里遺跡を見た時に実感できた。日本の平城には大体、堀がめぐらせてある。


  朝早み電車のりかふる三宅坂鴨ゐる濠を立ちてこそ見れ
                  古泉千樫
  まなこより血を流しつつ白鳥が夕べの濠に頭(かうべ)
  めぐらす            玉城 徹


  堀水の底なる冥(くら)き日輪にるいるいとして蝌蚪ら
  むらがる           杜澤光一郎


  絶えまなき街の騒音を夕闇に吸ひてひそけしお濠の水面
                  中曽根佳子
  行方なき堀の水にて石垣を打つのみ波はくり返しつつ
                  古田昭子