イチローを詠む(8)
イチローがヤンキースに移籍してから、彼の打率は再び三割台に戻った。マリナーズでの最終年は、球団・監督との間で様々な葛藤があったのであろう。あるいは案外、契約条項にのっとってクールな話し合いがあったのかもしれない。スポーツ紙は読まないので詳細は知らない。ヤンキースの選手としてマリナーズとの試合にセーフコフィールドに来るとイチローには大きな声援が湧きあがった。だがそれも数回のこと。ICHIメーターも掲げられていたのだが、200本安打の見込みがなくなってからは、見かけなくなった。
私には関係ないと思ひつつ成績下がる選手を憂ふ
イチローはかつてローマの剣闘士不調になればブーイング浴ぶ
さはやかな引け際が欲しイチローに似合わぬ無惨なる執着は
ピッチャーの夢は完全試合なり マリナーズのフェリックス・
ヘルナンデス語りき
沢庵が辞世に書きし「夢」一字消えにし後をいかに生くべき
夢なくて生くる人々多かりきギリシャ、スペインいづれ日本も
イチローの呪縛解けしかマリナーズ成績少し上向きにけり
イチローが来るたび揚ぐるICHIメーター セーフコフィールド
のファンはかなしゑ
ICHIメーター消えにしセーフコフィールドをさみしと言へり
武田一浩