鯉(4)
錦鯉には御三家と呼ばれる三種が特に有名。紅白、大正三色、昭和三色である。うち白色の体に緋色の斑点を持つ紅白が、最も早く養殖が始まった。紅白の斑点を表現するのに様々な用語が生まれた。赤無地、白無地、小模様、大模様、段柄、緒締め、ズボン履き、巻腹、口紅、丹頂等。
じつとして沈める緋鯉堪へ切れず動くと如く身をよぢりたり
大西民子
花のかげ塔のかげ鯉に砕かれて春の水面(みなも)のしづまり
がたし 羽生田俊子
冬池はゆふべ明るくをりをりに浮きくる鯉の口なまなまし
川島喜代詩
放流の鯉の太りて群がれりむれなすものはなぜか怖ろし
村松秀代
緋の鯉の尾鰭しなひてがばといふ重き叫びを水はあげたり
岡崎康行
ユーラシアより来しもののしづけさに鯉はをりたり大砲
(おほづつ)のごと 米川千嘉子