橋(3)
人知の限りを尽くした橋として、水道橋や眼鏡橋があげられる。この両者の機能を具備した日本の橋に、肥後の国の通潤橋がある。サイフォンの原理で橋に水を流し、円形の橋脚には熊本城の石垣の構造が取り入れられている。橋(1)のところに掲載した画像が通潤橋である。
ひぐらしのかそかに鳴ける峡を来て空に吊せる吊橋渡る
都築省吾
陸橋に見ゆる電車交叉点は柳ひともと青みわたれり
中島栄一
鉄橋を過ぎれば暗く光りつつわが汚れたる街が見えくる
水野昌雄
万世橋より眺望すれば春日町千石あたりの空に雪ふる
福島泰樹
吊橋の影を横たふ深谿の岩より現(あ)れて鳥の尾を振る
上野勇一
どの橋を渡れば到るにやあらむ生きるといふは限りなく橋
岡井 隆
橋として身をなげだしているものへ秋分の日の雲の影過ぐ
渡辺松男