天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

籾(もみ)

横浜市舞岡公園にて

 稲穂から掻き取った脱穀前の殻つきの米のことである。広島の山奥に住んでいた小学生の頃、「千歯」と呼ぶ足踏み式の機具で稲束から籾を掻き落す作業を手伝ったことがある。


  地下足袋の破れより入りし籾粒が籾かつぐたび足裏(あうら)
  に痛し               小西久二郎


  籾播きを了へしゆふべは籾の匂ひまとひて妻の肌あたたかし
                     宮岡 昇
  朝あさを籾の中よりさぐり出すかそけき狩のごとしりんごよ
                     高安国世
  籾干してすきまもあらぬ広庭の筵のへりを人ゆき通ふ
                     吉植庄亮
  さ筵の籾にとまりし赤蜻蛉とばすともせず秋ふかみかも
                    生方たつゑ
  葉鶏頭照る垣内は土固き広庭にして籾ひろげ干す
                    尾崎左永子
  たまさかにけふの日晴れて田作わが待ちに待ちたる籾摺の音
                     吉植庄亮
  籾を摺るひびきのやうにひとしきり聞こえてゐる夜の飛行機
                    佐藤佐太郎
  もみすりのほこりの香してはかなきに時雨のひびき寒き
  あかつき               板宮清治