月(3)
金葉集は第五番目の勅撰和歌集で、白河院の院宣により源俊頼が編纂した。しかし初度本は古めかしすぎてやり直し。ところが二度本は新奇にすぎてまたやり直し、三度目の奏覧でようやく了承されたという経緯であった。こうした撰集経緯からすれば三奏本を最も完成されたものとすべきであるが、人知れず宮中に秘蔵されたので二度本が早く流布し、主流となっている。よって従来の和歌集と比べると新奇な作風、誹諧趣向が目立つ。
草枕このたびねにぞおもひしる月よりほかのともなかりけり
金葉集・忠命
ながむればふけゆくままに雲晴れて空ものどかにすめる月かな
金葉集・藤原忠隆
やまのはに雲のころもをぬぎ捨ててひとりも月のたちのぼるかな
金葉集・源 俊頼
むら雲や月の隈をばのごふらむ晴れゆくたびに照りまさるかな
金葉集・源 俊頼
ながむればおぼえぬ事もなかりけり月や昔のかたみなるらむ
金葉集・藤原有教母
西へゆくこころはたれも有るものをひとりな入りそ山のはの月
金葉集・源 師賢