天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

月(4)

NHK新日本風土記「月の夜」から

 千載和歌集は、藤原俊成の撰になる七番目の勅撰和歌集である。格調と抒情性が重んじられ、俊成が唱えた幽玄の心が加わる。また本歌取りのような方法的革新がなされる。


  木枯しの雲吹き払ふ高嶺よりさえても月のすみのぼるかな
                  千載集・源 俊頼
  照る月の旅寝の床やしもとゆふ葛城山の渓河の水
                  千載集・源 俊頼
  塩竃の浦吹く風に霧はれて八十島かけてすめる月影
                  千載集・藤原清輔
  更けにける我が世の秋ぞあはれなるかたぶく月は又も出でなん
                  千載集・藤原清輔
  山の端にますみの鏡かけたりと見ゆるは月の出づるなりけり
                  千載集・藤原基俊
  草も木も秋の末葉は見えゆくに月こそ色はかはらざりけれ
                 千載集・式子内親王