月(2)
古今集になると月は内省・もの思いを誘う景物になるようだ。ところで、月の満ち欠けの度合いによって床しい名前がついている。新月、三日月、上弦の月、十三夜、小望月、満月、十六夜、立待月、居待月、寝待月、更待月、下弦の月、有明の月、三十日月 など。こうした呼び名がいつの頃から始まったのか、気になって調べているが、よく分らない。和歌に現れる呼び名は、望月(満月)、三日月、十六夜、有明の月 くらいであろうか。
あまの原ふりさけ見ればかすがなる三笠の山にいでし月かも
古今集・安倍仲麿
遅く出づる月にもあるかな足引の山のあなたも惜しむべらなり
古今集・読人しらず
月やあらぬ春や昔の春ならぬわが身ひとつはもとの身にして
古今集・在原業平
大方は月をもめでじこれぞこのつもれば人のおいとなるもの
古今集・在原業平
人に逢はむつきのなきには思ひおきて胸はしり火に心やけをり
古今集・小野小町
木の間よりもりくる月の影みれば心づくしの秋はきにけり
古今集・読人しらず
白雲に羽うちかはしとぶ雁のかずさへ見ゆる秋の夜の月
古今集・読人しらず