餅搗(もちつき)
正月が近づくと餅搗が始まる。冬の季語で、傍題には「餅の音」「餅の杵」「賃餅」「引摺り餅」「餅筵」「餅配」「餅米洗ふ」「餅搗唄」などと豊富である。
搗きあげし餅を嬰子のごと運ぶ 肥田埜勝美
餅筵踏んで仏に灯しけり 岡本松浜
餅配大和の畝のうつくしく 大峰あきら
餅搗きし臼のほてりや雪の上 大串 章
なかぞらに星のあつまる餅筵 木村虹雨
餅搗くと大きかまどに焚きつくる榾火は匂ふこのあかときを
古泉千樫
蒸す米の湯気たちょこむる土間のなかにときどき雪の吹かれて
来るも 中島哀浪
ふるさとのうからやからのあつまりて搗きけむ餅ぞこの粟の餅は
橋田東声
たのみたる餅つきあがり重ねればゆたけきごとし来む正月は
筏井嘉一