天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕗(2)

横浜市俣野別邸庭園にて

 最近は山野で自生する蕗が減少しているらしい。人出で栽培するものが増えている。市場に出回るものは栽培品種である。栽培種は一般に、苦みが少なく調理し易い。なお、毒性の強いアルカロイドが含まれているので、灰汁抜きをするなどの注意が必要。俳句では、夏の季語になっている。


     蕗採りの戻りて峡は日昏れたり    宮田正和
     蕗の香のあふれてゐたる一軒家   福田甲子雄
     伽羅蕗の滅法辛き御寺かな      川端茅舎


  蒲公英の咲くかたはらに丈のびし蕗の冠毛いま飛ばむとす
                     結城哀草果
  蕗の花すでに呆けて綿毛たつ聴禽書屋のめぐりをあゆむ
                      宮岡 昇
  蕗の葉を敷きたる上に新月のごとく光れる鮎置かれたり
                     安立スハル
  蕗の葉を丸めて水を飲ませくれし父の思ほゆ谷に憩えば
                      鎌倉広行
  手すさびに折れば匂へる蕗の香のかなしかりけり折れば匂へる
                      紀野 恵