天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

竹の歌(2)

近所の竹林にて

 「呉竹」はマダケ(真竹、最も普通の竹)の異名。「こちく」は胡竹で、「こち来」の掛詞。「河竹」もマダケ・メダケの異名であり、川畔の竹を意味する。「なよ竹」は萎竹とも言い、細くしなやかな竹、若竹。「なよたけの」は「とをよる」「起きふし」にかかる枕詞。


  いつか又こちくなるべき鶯の囀りそへし夜半の笛竹
                  後拾遺集・相模
  九重や庭の河竹かはらねば代々の跡あるしるべとぞ思ふ
              新続古今集後小松天皇
  夏の夜の月の霜にも撓むらむまだうらわかき窗のなよ竹
                     加藤千蔭
  月蔭にさはらぬほどをすがたにて繁りなそひそ窓の若竹
                     中島広足
  いにしへに父のつくりし裏山の真竹藪原見ればかなしも
                     橋田東声
  朝かげはいまだ寒しと竹むらに近づきゆけば風の音する
                     宮 柊二