塔の歌(2)
内藤多仲は、高さ4000mの塔も設計し、それに要する費用も概算していた。もちろんどこにも実現はしていない。東京スカイツリーが634mだから、その高さのほどが知れる。
泥濘にレモン沈める夕ぐれの心のなかに塔は直(すぐ)立つ
百々登美子
青く澄む吉備路の空に風鐸の影くきやかに浮き出づる塔
今泉 操
コンコルド飛びたつ街の聖堂の五層の鐘塔秋天に映ゆ
矢後すみ子
風鐸の常世のゆらぎつばらかに仰ぎて塔影のなかに身を置く
久泉迪雄
海の如く夕べ地上はくれてゆきたずさえて冷えし塔を下りぬ
吉田 漱
朱の帯をたたみゐたればまぼろしに塔のごときが崩れてやまず
真鍋美恵子
人間の孤独を上へ積み上げて成りたるものを塔と思はむ
宮 禮子
ちなみに現在、最も高い構造物は、UAEドバイの828mのビルである。計画中のものでは、クェート・スビアの1001mのビルで、2016年に完成予定。これらビルの設計ともなると、塔の設計よりも更に複雑な要素が加わってくる。