砂が喚起するイメージあるいは象徴するものには、もろさやはかなさがある。砂上の楼閣が典型。また「砂を噛むような」という比喩で、味気なさ・不愉快さを表す。ところが英文学の世界では、不毛・徒労、不安定といった負のイメージもあるが、希望・忍耐・勇気などを象徴することもあるというから面白い。
遙かにし集えるものは華やかに見えつつ熱き砂を踏みゆく
高安国世
気づかざる光はガラスに射しおりて水槽の底にあたたかき砂
林 義衛
砂の線つね崩れつつささやけりわがみぎひだりまたうしろにて
葛原妙子
岩はらの岩をこぼるる夜の砂音かすかにてわれは過ぎゆく
片山貞美
浅間より砂礫ふるときわが庭につづく田の水たちまち濁る
佐藤佐太郎
道のべに盛られし砂か昼ちかき日にかがやきてわれ通りゆく
佐藤佐太郎