天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

砂の歌(3)

中粗砂

 砂が喚起するイメージあるいは象徴するものには、もろさやはかなさがある。砂上の楼閣が典型。また「砂を噛むような」という比喩で、味気なさ・不愉快さを表す。ところが英文学の世界では、不毛・徒労、不安定といった負のイメージもあるが、希望・忍耐・勇気などを象徴することもあるというから面白い。


  遙かにし集えるものは華やかに見えつつ熱き砂を踏みゆく
                    高安国世
  気づかざる光はガラスに射しおりて水槽の底にあたたかき砂
                    林 義衛
  砂の線つね崩れつつささやけりわがみぎひだりまたうしろにて
                    葛原妙子
  岩はらの岩をこぼるる夜の砂音かすかにてわれは過ぎゆく
                    片山貞美
  浅間より砂礫ふるときわが庭につづく田の水たちまち濁る
                   佐藤佐太郎
  道のべに盛られし砂か昼ちかき日にかがやきてわれ通りゆく
                   佐藤佐太郎