天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ピアノ(続)

グランドピアノ(メーカのPR資料

 2010年8月17日にとり上げているが、ここはその続きである。ピアノ製作は18世紀後半にウィーンを中心に盛んとなった。この時代のピアノは現代の一般的なピアノよりも軽快な響きを持ち、減衰が早かった。
 ピアノ草創期と当時の作曲家との関係を見てみると、バッハは死の前年に、発明されたばかりの新楽器ピアノに接する機会があったようだ。その子ヨハン・クリスティアン・バッハはロンドンにいる時、少年時代のモーツァルトをひざの上に乗せて、二人の連弾でピアノを弾いたという。モーツァルト自身は3歳の頃からピアノを弾き始め、6歳でマリア・テレジアの御前で演奏した。


  蔽はれしピアノのかたち運ばれてゆけり銀杏のみどり擦りつつ
                      小野茂
  ピアノ弾く爪先点れるごとく見ゆ黒きアメリカ人の左手
                     阿木津 英
  カーテンのすこしふくらむときのまを凍ったピアノにあさの
  陽はさす                加藤治郎


  見えてゐる世界はつねに連弾のひとりを欠いたピアノと思へ
                      荻原裕幸
  鍵盤に指をあつめておりてゆくピアノとふ年月の深井戸を
                      河野美砂子