天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

銀杏(3)

北鎌倉・東慶寺にて

 イチョウ科の植物は中生代から新生代にかけて世界的に繁栄し、世界各地で化石が出土しているが、氷河期に絶滅し、うちイチョウだけが唯一現代まで生き延びた種という。


  重なりて銀杏落葉の散れる道その香はとほき哀しみをよぶ
                     香川哲三
  銀杏樹が今日から光の樹になった生きて歩ける夫と見にゆく
                    佐々木史子
  黄落のいちやうは吾子にあらざるをかがやき舞へばわが
  乳(ち)痛めり             水原紫苑


  つらなれる銀杏の冬木きらめかし浄くするどし冬の光は
                     葛原 繁
  引力のやさしき日なり黒土に輪をひろげゆく銀杏の落ち葉
                     大西民子
  歩道橋越えゆく時を逆光となりて公孫樹は風をたくはふ
                     小林敦
  いっぺんに飛び立つならば今宵かも公孫樹に群れる黄金蝶は
                     佐藤千代子