天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

銀杏(4)

北鎌倉・建長寺にて

 銀杏の実をギンナンと呼ぶが、中国の唐音の『ギン・アン』)に由来する。銀杏の原産地は中国とされ、日本にもたらされ、日本からヨーロッパへ渡って更に広まった、というが私自身史実として確認したことはない。


  枯れいろのかげりしづかな公孫樹とほく見ながら庶民の一人
                     片山貞美
  日本の服しづけくてをみな等は銀杏の樹下黄を踏みあゆむ
                     田谷 鋭
  妻子率(つまこゐ)て公孫樹のもみぢ仰ぐかな過去世・来世に
  この妻子なく             高野公彦


  一葉の散るなく燃ゆる大銀杏この緊縛にしまらく耐へよ
                     筒井早苗
  天空より声あるときを大銀杏仰げばいつもどこかが揺れてゐる
                     鳥山順子
  いつぽんの木となりたればすがすがと銀杏は白く冬の陽を浴ぶ
                     坂出裕子
  風落ちて万象静かなる今しいちやう幾ひらは光がこぼす
                     稲葉京子