狐(2)
きつねは霊獣として親しまれ信仰の対象にもなった。また洋の東西を問わず頭が良く人を騙すといわれる。そして稲荷明神の使いともされる。童話や伝説によく現れる。「狐につままれる」「キツネうどん」「きつね目」などの熟語もある。
冬ちかく夜霜はいまだ降らねども裏山狐すでに鳴くとふ
吉井 勇
遠ざかる狐の声のあはれにも谷にしみ入る山彦となる
土屋文明
病棟のいくたりが覚めこの鳴ける山の狐をききわびてゐむ
上田三四二
カシミールの狐の皮を背に負へり足萎へ我の冬籠るとて
吉野秀雄
昨夜(よべ)聴きし狐の聲のすさまじさ思ひてまたも目を
閉づあはれ 吉野秀雄
狐 狐何をせつなく悔(くや)むぞと聞き居てしばし遠し
そのこゑ 斎藤 史
湯の宿の庭に狐は老いむとし雪にあそべり腐りをつけて
大野誠夫