狐(1)
古名は「きつ」。日本全土に分布する。夜行性、肉食イヌ科。日本の野生狐には、アカギツネの亜種ホンドギツネと北海道の別亜種キタキツネがいる。世界的には、棲息地域の名前のついた狐の種類がある。またオオミミギツネ、カニクイキツネなど身体的特徴や食べ物の特徴に由来する名前もあり多彩である。
鐺子(さしなへ)に湯沸かせ子ども櫟(いちひ)津の檜橋
(ひはし)より来む狐(きつね)に浴(あ)むさむ
万葉集・長忌寸意吉麻呂
夜も明けばきつに食(は)めなむくたかけのまだきに鳴きて
夫(せな)を遣りつる 伊勢物語・作者不詳
蛇きつね火つけ盗人(ぬすびと)かどはかしをかしき名のみ
我は貰(もら)ひぬ 与謝野鉄幹
春ゆふべそぼふる雨の大原や花に狐の睡(ね)る寂光院
与謝野晶子
夕ぐれを花にかくるる小狐(をぎつね)のにこ毛にひびく
北嵯峨の鐘 与謝野晶子
ここに来て狐を見るは楽しかり狐の香こそ日本古代の香
斎藤茂吉
狐にも巣ありといへりさびしさや林のおくの眼にうつり来る
若山牧水