天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

風ひかる(続)

年初の神奈川県二宮町吾妻山にて

 2008年1月30日に続いて、俳句、短歌の作品をあげる。陽光が次第に強まってくる春の気配を表す表現。風光ると言っても風自身が光るわけでなく、風に吹かれているものが光るのである。


     日の春のちまたは風の光り哉    暁台
     覇王樹の影我が影や風光る   飯田蛇笏
     山を吹き風を吹きては風光る  植田房子
     風光る椎樫の空恍惚と     石塚友二
     風光り折り目正しき工衣過ぐ   林 翔
     江ノ島をさらふ大波風光る   北側松太


  風光るみぎわの砂の西東(にしひがし)真一文字に少年はしる
                    加藤克巳
  風は光を渦にして吹く逞しき腕が肩抱くを求めゐる子に
                    春日井建


[参考]暁台=江戸中期の俳人・加藤暁台。蕉風 (しょうふう) を慕い、
   「秋の日」の編集などにより、その復興運動に努めた。