天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨のうた(8)

歌川広重の浮世絵から

 福島泰樹は、安保闘争世代である。闘争時のことを数多く歌に詠んでいる。また「短歌絶叫コンサート」で、感情を込めた力強い声色で朗読会を開催している。台東区下谷法華宗本門流法昌寺の住職である。



  かぎりなき雨の中なる一本の雨すら土を輝きて打つ
                     山崎方代
  先頭を駆けゆくわれもそしてわが未来も雨脚(あめ)に
  先取りされつ             福島泰樹


  帰らざる時の彼方を漆黒の雨はたばしり居るのであろう
                     福島泰樹
  とめどなき雨まなぶたのうちながら過ぎゆく一人がちぎれむ
  ばかり                西村 尚


  いちにちを降りゐし雨の夜に入りても止まずやみがたく人
  思ふなり               藤井常世


  あけぼのの動ける部屋に石の上の雨を聞きおり眼鏡を置きて
                    石田比呂志
  みだりつつ夜のひとときを降る雨の雪の上(へ)にしてゆたかに
  聞こゆ                岡部文夫


  雨の水光となりてひたくだる坂ありこころ響(な)りつつ仰ぐ
                    山本かね子