天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白鳥の歌(6/9)

身づくろい

 山中智恵子の歌は、作者の狙いが透けて見えるようで、よろしくない。小島ゆかりは、白鳥の鳴き声を「ぼーむ」としているが、実態とかなり違う。録音した鳴き声を聞くと、か音やこ音が主体になっている。そこが詩的表現の工夫であろう。小島ゆかりオノマトペの名手。


  雪明り月明りなる越の野に白鳥(くひ)明り微かに
  湖を灯せる             箕原和子


  首長くのべて飛びゆくハクチョウのひたすらにして
  沼の上に出づ            大悟法進


  白鳥(しらとり)も焼けば黒鳥(くろとり)春の日の
  しづこころなくさくら散りくる   山中智恵子


  次々に星座をよぎる白鳥らまぼろしの船のへさきのごとし
                    松村敏子
  白鳥の身に純白のみづ実りぼーむと啼けり雪ふる朝
                   小島ゆかり
  白鳥の飛来地をいくつ隠したる東北のやはらかき肉体は
                    大口玲子
  水暗き濠に音して近づける白鳥の首垂直に伸ぶ
                    上月昭雄


[注]右上の写真は、次の「水鳥達の写真」から借用した。
http://big-swan.com/category/%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F/