天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

白鳥の歌(5/9)

眠り

 稲葉京子の歌は、母親の感受性・母性を詠んでいて興味深い。大塚陽子の二首は、日本にくる白鳥を強く意識したもの。岩田 正の「白きとり」は、ハクチョウとは限らないだろう。


  白鳥をうつくしからぬといふ吾子よわが裡の何を
  罰するならむ            稲葉京子


  力こめて羽撃きにつつ水面を滑走しつつ近づく白鳥
                   日野原典子
  海おほひ天おほひ群るる白鳥のとほき流氷にもとどまりて啼く
                    樋口賢治
  かつて国敗れし冬も白鳥は来てゐしか数千羽湖おほひたり
                    大塚陽子
  掌の餌をとるまで馴らせし白鳥のシベリヤへ還る力うたがふ
                    大塚陽子
  雪の中より噴き上る水を浴みてゐる白鳥のつがひ声も立てなく
                    三國玲子
  海翔(か)けてきし白きとり大きなる生きものとなり窓を
  よぎれり              岩田 正


[注]右上の写真は、次の「水鳥達の写真」から借用した。
http://big-swan.com/category/%E7%99%BD%E9%B3%A5%E3%81%AE%E5%86%99%E7%9C%9F/