天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

海のうた(8)

桜貝(webから)

 海と周辺の情景を見つめていると内省的になりロマンチックにもなる。叙景のうちに自分の感情を入れる短歌にとっては、格好の素材といえる。



  我が歩む前も後も孤をつらねあなはろばろし渚白波
                    葛原 繁
  わが影の折れては伸ぶる石段の尽きて海あり職退かむとす
                    高倉洋子
  視界なき海に霧笛の底ごもりわれは漂ふ祖国はるけく
                    筒井早苗
  渦を巻き落ちゆく潮の誘惑に眼開きて足裏引き締む
                    林三重子
  悔いばかりこみあげてくる断崖に視線こらせば遠い帆がゆく
                    飛高 敬
  航跡の消えるまでねと言いながらまだここにいる風に吹かれて
                    今井恵子
  遠浅に桜貝ひとつひかりおり波に乗りえぬかなしみのごと
                   市野千鶴子